授業・講義やセミナーを聞いていて、気が付くとボーっとしていたりウトウトしていたりすることがあると思います。
集中に関しては受講者側の責任が大きいですが、講義側も工夫を施せばこうした関与の低下を防止できそうです。
この記事では、主に講義を行う側の視点で、受講者の集中力を維持するためにはどのようにすればいいのか先行研究をもとに考察します。
受講者側が求める良い講義・レクチャー
受講者からみた「良い講義」はどのようなものでしょうか?
島根県立大学の研究チームは、『学生が求めるよい講義・演習』を調査しています1)藤田小矢香, 長島玲子, 吾郷美奈恵 「学生FDメンバーが考える「学生が求めるよい講義・演習とは」」 島根県立大学出雲キャンパス 第11巻 43-48 2016。
具体的にはある大学のFaculty Development(FD, 教職員の教育能力の開発)の一環で、授業や教育の改善に興味を持つ学生で組織されたFDの集団である「学生FD」が主観で洗い出した良い講義・演習の要素を分類しています。
この調査によると良い講義の要素は大きく5つに分類されています。
学習環境の基本となるもの
ここでは空調の快適さや教員の話の聞き取りやすさ、出欠などの厳密な管理などが挙げられています。
ここで挙げられているのは授業の内容や、個人の欲求に関わらず、整っていることが好ましい要件と言えます。
科目の展開
カリキュラムにおける位置づけの明瞭さや授業の計画的な設計が挙げられています。
受講者側は講義の中で自分の立ち位置が確認できる仕組みを求めていると言えます。
毎時の展開
学生の主体的な参加や教員側の学生の状況の把握などが挙げられています。
受講者側は講義への積極的な関与を求めていると言えるでしょう。
教職学の交流
授業外の教員との交流が挙げられています。
生産性には、大きく周りとの人間関係が関係することが実験からも知られています。
将来の展望
卒業時の進路が意識できること、今後につながることなどが挙げられています。
受講者側が、受講による明確なメリットを求めていることが伺えます。
webでも受講者の集中力がわかる??
最近ではZoomをはじめとしたウェブ会議システムの使用も増えてきました。
ウェビナー(Webセミナー)形式だと受講者側のリアクションやエンゲージメントが分かりにくいという課題もあると思います。
こうした課題は、チャットなどインタラクティブに受講者と関われる機能を使うことで解消できますが、それでもオフラインと比べると限界がある部分もあります。
こうした課題の解消につながりそうな受講者の関与の測定に関して先進的な取り組みもあります。
例えば脳波計から検出されるα波をもとに受講者の集中状態を図る取り組みがあります。2)長瀬綾佑, 藤田晃佑, 唐山英明, ロペズ ギヨーム, 戸辺義人 「脳波を利用した遠隔通信相手集中度計測システムの設計と実装」 第74回全国大会講演論文集 45-46 2012年
また、webカメラを用いて、瞬きを検出し集中度を評価した研究もあります3)兜森仁志, 安彦智史, 長谷川大, 佐久田博司 「webカメラを用いた瞬き検出による集中度評価」情報処理学会 第77回全国大会講演論文集 931-932 2015年。
どちらもまだ課題があるようですが、カメラ越しに居眠りを注意されるようになるのも当たり前になるかもしれません(受講者側からすると怖いですが。。笑)。
まとめ
この記事では、良い講義・レクチャーについて主に講義側の観点からいくつかの研究結果をもとに説明しました。
当たり前のことではありますが、オンライン・オフラインに関わらずこうした観点を見直すことでよりよい講義を行う工夫ができそうです。
もちろん受講者側でできる工夫もたくさんあります。
例えば講義の前に仮眠をとる、直前の食事を控える、集中力が切れた時にツボを押すなどの対策が考えられます。
それぞれについてもまとめてあるので見てみてください。