集中と極めて関係が深い概念に「注意(attention)」があります。
人間の注意のメカニズムは認知神経科学においても一つの研究分野となっています。
この記事では注意の学問的な二つの類型を紹介し、集中力との関係についても触れます。
注意と視線
注意という言葉からは視線を向けているニュアンスを感じるかもしれませんが、よく考えると必ずしも視線とは関係ないです。
例えば、パソコンの作業をしながら、火にかけたやかんに注意を向けることも人間はできます。
視線と注意は大体の場合一致していますが、そうではないこともあるということを注意の性質として知っておきましょう。
注意の類型
注意には内発性注意と外発性注意の二種類があると言われています1)村上郁也 「イラストレクチャー 認知神経科学 心理学と脳科学が解くこころの仕組み」オーム社 2012。
前者はざっくりと言えば、意図的に人が向ける注意です。反対に後者は意図に関係なく、視界に入った画面の点滅に向けられてしまうような注意を指します。
つまり注意の観点から言えば、集中状態とは内発性注意が外発性注意よりも優位な状態と位置付けることができます。
こうした分類はなされていますが、その二つの注意がいかにして生まれているのか(それぞれ独立した脳の部位が役目を果たすのか、そうでないか)、外発性刺激の出現により注意は完全に自然とむけられてしまうのかについてはまだ議論があるようです。
集中=注意している状態?
前項で集中について「内発性注意>外発性注意」の状態と説明しました。
注意の観点から言えば、手元に集中する対象を置き、外発性注意を引き起こすような障害(スマートフォンや、その他の誘惑)を遠ざければ(外発性注意を引き起こすものを減らす)、集中状態に入れることになります。
これはある程度正しいですが、必ずしもその状態でも集中できるとは限りませんよね。
お腹が空いてしまったり、対象に対して飽きてしまったりすると集中力は落ちてしまいます。
これは内発性注意が落ちて、結果として「内発性注意>外発性注意」の状態になったと説明できます。
内発性注意を保ちながら外発性注意の発生を減らすというのが集中の維持の方法なのかもしれません。
一方で集中は、もっと長期的なタスクに対しても指す場合があり、その範囲では必ずしも注意での定義はあてはまらないと言えます。
その範囲では、目標管理や、集中の対象をいかに管理するかが重要になると言えます。
まとめ
この記事では集中に近い概念として「注意」を取り上げ、その類型と集中との関係について紹介しました。
集中力という言葉は経験則的・観念的に捉えられがちですが、注意の観点から説明すると少しわかりやすくなりますね。
集中と注意は必ずしもイコールではないですが、注意のメカニズムを理解して日々の集中に生かしていきましょう。
References
↲1 | 村上郁也 「イラストレクチャー 認知神経科学 心理学と脳科学が解くこころの仕組み」オーム社 2012 |
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