集中力がない、集中力がほしいと思う人は多いですが、自分の集中力不足の原因を的確に把握できている人は多くないのではないでしょうか。
対策の仕方が分からずに悩んでいる方も多いかもしれません。
「ハーバード集中力革命」(エドワード・M・ハロウェル著 小川彩子訳 サンマーク出版 2016)の中で著者の医学博士・精神科医のハロウェル博士はこうしたインターネット時代における特有のADHD(注意欠陥多動性障害)に類似した症状を「ADT(注意欠陥特性)」と呼び、それらを6つの類型に分類しています。
型に当てはまっている可能性が高いです。
自分がどのような特性があるかを客観的に把握することで集中力の改善につなげることができるでしょう。
この記事では、本書に挙げられている集中力の欠陥の類型と、その対処法を紹介します。
ADTとは?
ADT(Attention-Deficit Trait)は注意欠陥特性の略称です。
1994年に著者自身が作った用語で、ADD(注意欠陥障害), ADHD(注意欠陥多動性障害)を遺伝的な原因によるもの、ADTを環境など外部の原因によるものと規定しています。
ADTは深刻化するとADHDなどと同じ症状がみられるようになること、後天的なもののため、最初は特に目立たず、次第に悪化することなどの特徴が挙げられています。
ADTの6つの分類とそれぞれの対処法
ADTの分類について以下の6つのパターンが見られるとされています。
- デジタル依存症
- マルチタスク
- アイデアホッピング
- 心配性
- おせっかい焼き
- へまばかり(本当のADHD)
順番に見ていきましょう。
デジタル依存症
パソコンでのデスクワークが日常的な現代では、無意識のうちにデジタル依存に陥っている人は多いと思います。
依存性が強くなると集中力不足を中心に様々な問題が引き起こされます。
特徴
デジタル依存にも度合いがありますが、本書では大きく二つの依存症の基準が指摘されています。
- (家族や同僚など)他人に迷惑になる
- 問題に対して非自覚的である
インターネットの依存性が強いことの原因の一つとして、筆者は「双方向性」を挙げています。
つまりテレビやラジオなどの以前の媒体においても依存傾向のある人はいますが、インターネットや近年のスマートフォンアプリはこちらから発信したり、
画面の向こう側とよりインタラクティブに関われるがために、より依存性が高くなるということです。
またコンテンツは膨大であるため、これらのどれかにハマってしまうのはうなずけます。
対処法
対処法としてまずパソコンやスマートフォンなどの使用時間を嘘偽りなく記録することが推奨されています。
そのうえで、退屈しのぎにパソコンをいじる時間などをデジタル以外で置換することなどが対策として挙げられています。
マルチタスク
職場などで起こりがちなマルチタスクも集中力を奪う原因として挙げられています。
二つのことを同時にこなすことで時間を効率的に使っている錯覚に陥りがちですが、その実自分の首を絞めていることがあります。
特徴
文字通り、複数のことで頭がいっぱいになり本来集中すべきことに集中できていない状態がこのタイプです。
いつの間にか要領よく頑張ることを忘れがむしゃらに取り組んでしまい、結局片付かないタスクに精神的に追われることになります。
またマルチタスク型のADTの特徴として「NO」と言えないことが挙げられています。
対処法
「いいえ」を適切に使うことが対処法として挙げられています。
自分が手が回らない状態にある時はその事実を正直に伝え、要求を断る練習をすることでこうした状態に陥るのを予防することができます。
アイデアホッピング
アイデアマンは優れた人間が多いのも事実ですが、その反面様々なアイデアは湧いてくるものの一向に一つに集中できない状態に陥る可能性があります。
特徴
アイデアがあふれ出てくるものの実行に移すことができないこと、一度始めたことをやり遂げられないことなどが特徴として挙げられています。
また、こうした性質は幼少期のトラウマなどが影響していることもあることが示唆されています。
対処法
対処法として、出てきたアイデアを紙に書きとめ、そこから自分が本当にやりたいことに絞る訓練をすることが挙げられています。
また、たくさんのアイデアを持っている自分に自信を持つことも重要です。
心配性
心配性の性質は仕事における向上心と表裏一体でもあります。
一方で、同時に大事な人との時間を十分にとることをおろそかにしたりと適切にエネルギーをつぎ込めなくなる恐れがあります。
特徴
働いてお金を稼いでもまだ足りないと感じるなど、心配と感じる必要が客観的にないにもかかわらず心配してしまう人がこれに当てはまります。
この分類では自分のことに集中できないというよりも大事な人や家族などとの時間を十分に取れないなどの症状が特徴的です。
心配性の性質は遺伝や育ってきた環境に大きく依存するとも書かれています。
対処法
対処法として大きく、孤独に陥らないことと事実のみを把握することが挙げられています。
一人で心配すること、客観的な事実や情報を持たずにいたずらに心配することは症状を強めるので注意が必要です。
おせっかい焼き
利他的な人は職場においても信頼され、好まれる傾向にありますが、その人本人にとっては集中力を発揮しづらくなっていしまうことがあります。
こうした利他的な人が陥りやすい症状を「おせっかい焼き」という言葉で説明しています・
特徴
こうした状態に陥りやすい人には頼まれたことに対して断れない、対立の解消に尽力するなどの性質があります。
他人のことが優先になり、自分の仕事に注力できず、結果として集中力を失っていくことになります。
対処法
まず他人のためになれることを才能であると認めつつも、自分の時間を持つことが重要であるとされています。
他人の面倒を見るのと同様に、自分の面倒を見ることが組織にとって重要であることを自覚することによって今まで他人に向けていた努力や反射的な反応を自分に向けるように改善していくことが対処法として挙げられています。
へまばかり(本当のADHD)
上の5つに当てはまらず、集中力の不足に悩んでいる場合、ADHDである可能性があります。
特徴
上記の5つに当てはまらず、計画を立てることが難しい、集中力が不足しているなどの問題を抱えている場合はADHDの可能性があります。
ここではADHDもADTの6類型の一つに含まれています。
対処法
対処法として、自分のADHDを受け入れること、自分の状態についてよく知ることが挙げられています。
また、ADHDには誇るべき特質も多く含まれていることが多いため、そうした長所を認めることも重要であるとされています。
まとめ
この記事では、書籍の内容をもとにADTの分類、特徴やその対処法について説明しました。
自分が当てはまるものがあるからといって自分がダメだと悲観する必要はありません。
本書に述べられているようにあくまで後天的であり、改善する余地はあるので、落ち着いて一つずつ改善していくことが重要です。