「貧乏ゆすり」についてどんなイメージを持っているでしょうか?
「貧乏」というニュアンスから、よくないことというイメージがあると思います。
子供の頃も貧乏ゆすりをしていると注意されたという経験がある人も少なくないと思います。
貧乏ゆすりは社会的に見ると忌避される行為ですが、実は集中力を保つという観点から見るとむしろ役に立つ動作であるという説があります。
この記事では作業における集中力を高めるという観点から貧乏ゆすりが役に立つ理由について説明します。
そもそも貧乏ゆすりとは?
貧乏ゆすりは実際のところ何なのか、ここでは貧乏ゆすりの由来と原因について説明します。
貧乏ゆすりの由来
貧乏ゆすりの起源はわかりませんが、貧乏揺(びんぼうゆるぎ)として、江戸時代の文献に登場しています。
われらのやうなるかねもちのひざをゆるがすをも、なぜびんぼうゆるぎとはいふぞ
咄本・私可多咄(しかたばなし)〔1671〕四・一
訳すと「私たちのような金持ちが膝をゆするのもなんで貧乏ゆすりって言うのかな?」という意味合いです。ちょっと笑えますが、当時から貧乏のニュアンスがあったことがよくわかりますね。
ちなみに貧乏というニュアンスはどうやら日本特有のもののようで、英語だとKnee-jiggling(jiggleは「揺らす」の意)となっており、「貧乏」のニュアンスはありません。
貧乏ゆすりが起きる原因
貧乏ゆすりが起こる原因はいくつか知られています。
最も一般的に知られているのはストレスや緊張を緩和するために無意識的に挙動として現れているというものでしょう。
また、座ることによって生じる下半身の血行の悪化を無意識に改善する行為、運動不足を解消する行為とも言われています。
一方で貧乏ゆすりが自分でコントロールできないほど強く発生してしまう場合は、Restless Legs Syndrome(通称:RLS むずむず脚症候群)というれっきとした病気である可能性もあります。
アメリカでは、RLSの患者が7-10%もいると推定されています(参考:Why Do I Want to Bounce My Leg All the Time?)。
集中力の観点から貧乏ゆすりが好まれる理由
貧乏ゆすりを意識的に取り入れることは、以下の4つの観点から集中力の発揮に効果がある可能性があります。
- 自律神経を活性化させる
- リズムが生まれる
- 足の血行がよくなる
- 効果を知ることで悩む必要がなくなる
自律神経を活性化させる
貧乏ゆすりは自律神経を活性化させ、暗記などに効果的であることが報告されています
中部大学の研究チームは、貧乏ゆすり(微少揺脚運動)は、自律神経を興奮させる効果があるとされています1)青木孝志、足達義則 「デスクワーク中に可能な運動として行う微小揺脚運動(貧乏揺すり):経絡自律神経活動の変化」 Jounnal of lnternational society of Life lnformation Science(ISLIS) Vot25, March 2007。
もともとこうした学習への効果は、歩き回ることで血流がよくなり、脳が活性化すると言われていました。同様の効果が貧乏ゆすりでも得られることを示した形です。
リズムが生まれる
貧乏ゆすりのリズムが集中力にポジティブに働く可能性もあります。
10年前の古いものですが、貧乏ゆすりは無意識に現れる集中状態にある時の人間のリズムであるとし、貧乏ゆすりにバイオフィードバックを適用することで、積極的に集中力を作り出す試みが行われていたこともありました(参考:「貧乏ゆすり」で脳の集中力を高める装置:明和電機と面白法人カヤック)。
足の血行がよくなる
座り続けることはそもそも健康に悪いという説があります。
以下の記事で、座り続けることの悪影響を説明しています。
足を小刻みに動かすことで、こうした悪影響を緩和できます。
効果を知ることで悩む必要がなくなる
貧乏ゆすりが癖になっている人は落ち着きがないことに悩んでいるかもしれません。
意識的に貧乏ゆすりを行うことで集中できると分かれば、今までネガティブに捉えていた貧乏ゆすりをポジティブに捉え直すことができるでしょう。
そのほか、ちょっとした運動になることでダイエットにつながるとの効果や、エコノミークラス症候群の予防につながるとの効果も報告されています。
こうしてみると意外にもメリットが多い運動なのですね。
まとめ
ただし、貧乏ゆすりは嫌われているのはまぎれもない事実なので、人と一緒に作業するときにはやらないように心がけることなどは最低限のマナーとして必要だと思います(参考:超わかる! 仕事中に隣の席でやられたくないこと)。
貧乏ゆすりに対して意識的になることで「無意識の貧乏ゆすり」を減らしていくことも重要でしょう。
一方でこの記事で説明したようなメリットは積極的に享受したいものです。
最近ではテレワークの普及も進み、在宅で仕事をする機会が増えた一方なかなか集中できないという人も多いと思います。
個人の自宅作業で集中できないときなど誰にも迷惑をかけないタイミングで、意識的に取り入れるといいかもしれませんね。
References
↲1 | 青木孝志、足達義則 「デスクワーク中に可能な運動として行う微小揺脚運動(貧乏揺すり):経絡自律神経活動の変化」 Jounnal of lnternational society of Life lnformation Science(ISLIS) Vot25, March 2007 |
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