「ウルトラディアンリズム」という言葉をご存知でしょうか?
生体リズムとして「サーカディアンリズム」は有名ですが、こちらは聞いたことがない人も多いのではないでしょうか。
ウルトラディアンリズムで説明される生体リズムは、集中力とも深く関係があります。
この記事ではウルトラディアンリズムとはなにかを説明し、集中の観点から人間の生体リズムを考察します。
人間の生体リズム
まずは、人間の生体リズム、サーカディアンリズムと、今回のテーマであるウルトラディアンリズムについて説明します。
サーカディアンリズム
サーカディアンリズム(概日(がいじつ)リズム)は、人間の1日、24時間の周期の生体リズムを指します。
よく「体内時計」とも呼ばれます。
サーカディアンはラテン語で「およそ1日」の意味だそうです。
体温やホルモンの分泌、朝目が覚め夜に眠くなる覚醒と睡眠のリズムも、このサーカディアンリズムによるものとされています。
ウルトラディアンリズム
ウルトラディアンリズムは、人間が覚醒時でも、睡眠時と同じように、およそ90分サイクルの生体周期を踏襲するという概念です。
「睡眠研究の父」と言われるナタニール・クライトマン(Nathaniel Kleitman)によって1963年に提唱されたと言われています1)MITSUO HAYASHI, KAYO SATO, AND TADAO HORI “ULTRADIAN RHYTHMS IN TASK PERFORMANCE, SELF-EVALUATION, AND EEG ACTIVITY” Perceptual and Motor Skills, 1994, 79, 791-800。彼自身の言葉では、BRAC(Basic Rest-Activity Cycle)と書かれています2)Nathaniel Kleitman, Basic Rest-Activity Cycle-22 Years Later Sleep, 5(4)311-317 1982。
その後の研究でも、食事や喫煙の欲求のサイクルなど、90分程度の生体リズムは報告されています3)Nathaniel Kleitman, Basic Rest-Activity Cycle-22 Years Later Sleep, 5(4)311-317 1982。
サーカディアンリズムが大きなサイクルであるのに対し、ウルトラディアンリズムは小さなサイクルと言えます。
人間の生活リズムはこれらの二つの周期の異なるリズムによって生まれていると言えます。
睡眠周期とウルトラディアンリズム
ウルトラディアンリズムは、その発見のきっかけになった睡眠周期とも関連があります。
前述のクライトマンが「睡眠研究の父」と呼ばれる所以にレム睡眠(REM: Rapid Eye Movement)の発見があります。
人間の睡眠の二種類レム睡眠(比較的浅い睡眠)・ノンレム睡眠(深い睡眠)の二つがあることが知られており、この二つはおよそ90分周期で繰り返すと言われています。
よく1時間半の倍数で睡眠時間を設定することが推奨されるのは、このためです。
つまり、深い睡眠(ノンレム睡眠)に移行する前に起きてしまうのが良いということですね。
そしてこの睡眠サイクルの周期が覚醒時にも見られる、という発見がウルトラディアンリズムにつながっています。
集中と人間の生体リズム
これらの生体リズムから集中に関してどのようなことが言えるでしょうか?
いくつかの観点から集中法について紹介します。
規則正しい生活で体内時計を整える
サーカディアンリズムは、人が毎日同じ時間に目を覚ますなど規則正しい生活を送っているときに正常に機能すると言われています4)sleepfoundation.org 「What is Circadian Rhythm?」 “https://www.sleepfoundation.org/articles/what-circadian-rhythm”。
生活リズムが崩れていると適切に集中力を発揮できなくなることが知られています。
一回に集中する時間は一時間半前後に設定する
日中もウルトラディアンリズムによりおよそ90分の生体リズムが持続するため、作業と休憩の基準はおよそこの時間で設定する方が好ましいと言えます。
大学の授業の講義時間は多くが90分程度に設定されており、時間設定として理にかなっていると言えます。
就業時間でしか規定されていない作業時間であってもこのリズムを意識したオンオフの切り替えを行うといいでしょう。
作業の後の休憩時間には短時間の仮眠がおすすめです。
もちろん寝過ぎは禁物ですが、15分程度の仮眠をとることで覚醒のリズムをコントロールできます。
まとめ
この記事ではウルトラディアンリズムとは何かを説明し、人間の集中力と生体リズムの関係についても紹介しました。
集中力の持続には生体リズムも関係しているということを知っておくと、作業時間の目安になりそうです。
さらに細かい時間設定についてはポモドーロ・テクニックの25分+5分のサイクルをお勧めします。
ポモドーロテクニックについては以下の記事で紹介しています。
References
↲1 | MITSUO HAYASHI, KAYO SATO, AND TADAO HORI “ULTRADIAN RHYTHMS IN TASK PERFORMANCE, SELF-EVALUATION, AND EEG ACTIVITY” Perceptual and Motor Skills, 1994, 79, 791-800 |
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↲2, ↲3 | Nathaniel Kleitman, Basic Rest-Activity Cycle-22 Years Later Sleep, 5(4)311-317 1982 |
↲4 | sleepfoundation.org 「What is Circadian Rhythm?」 “https://www.sleepfoundation.org/articles/what-circadian-rhythm” |