1/fゆらぎとは?日常のあらゆる現象に共通するリラックスのパターン

1/fゆらぎとは?日常のあらゆる現象に共通するリラックスのパターン

集中力と音楽の関係について調べてみると、「1/fゆらぎ(えふぶんのいちゆらぎ)」という言葉がよく見られました。

比較的有名な概念なようですが、知らなかったので今回調べてみました。

この記事では、1/fゆらぎとはなにかどのような効果があるのかについて解説していきます。

1/fゆらぎとは?

1/fゆらぎについては、この概念のパイオニア的な存在である東京工業大学の武者利光先生の論文「1/fゆらぎ」でわかりやすく説明されています1)武者利光 「1/fゆらぎ」 応用物理第46巻第12号(1977)

まず「1/f」について知るために「1/f雑音」の概念を整理しておきます。

もともと1/f雑音ピンクノイズ)というものが1925年のJ.B.Johnsonの論文で報告されました。

1/f雑音については論文の中で以下のように書かれています。

この低周波数にあらわれる雑音のパワー・スペクトル密度は周波数fに反比例することから,この種の雑音は 「1/f雑音」,「fllicker noise」,「excess noise」 とか,さらには「pink noise」とシャレて呼ばれている.

パワースペクトルとは「信号のパワーを一定の周波数帯域毎に分割し、各帯域毎のパワーを周波数の関数として表したもの」、パワースペクトル密度とは「単位周波数あたりのパワースペクトル」を指します2)https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/c_support/tech_term/cf_fft/cf3_4.htm#cf3_6mark2

パワースペクトルなどの専門用語は今回の理解にはあまり重要ではありませんが、もっと知りたい方は以下の記事がわかりやすくまとまっていたので参考にして見てください。
九州大学附属図書館「「音」とはそもそも何だろうか!?: パワースペクトル パワースペクトルとは?」

話を戻すと、こうした1/f雑音はその後の実験の中で次々と報告されていきました。

そして、今度は自然界の現象や人間の活動における「ゆらぎ(現象)」の中に、これと類似したスペクトルが出現することがわかってきました。

これが「1/fゆらぎ」です。

ここでいう「ゆらぎ(fluctuation)」は極めて広義の概念です。ゆらぎの定義について武者先生はインタビューの中で「ものの予測のできない空間的、時間的変化や動き」、「ものの空間的、時間的変化や動きが、部分的に不規則な様子」などと説明しています3)https://www.athome-academy.jp/archive/mathematics_physics/0000000230_all.html

例えば日常に見られる「ゆらぎ現象」の例として、以下のようなものが挙げられています。

  • 長期にわたる気温変動
  • 高速道路上を疾走する自動車の流量の変動
  • 交響曲の音の大きさの変動
  • 地球の自転速度の変動

もっと卑近なものでいうと、などといった一般的な「ゆらぎ」のイメージに当てはまるものも含まれます。

こうした様々な現象における「1/f」の存在は、ある共通の原理の存在を示唆しており、一つの研究トレンドとなりました。

1/fゆらぎとは、1/f雑音(ピンクノイズ)と類似したスペクトルを持つゆらぎ(現象)のこと

1/fゆらぎのリラックス効果

1/fゆらぎの現象について説明してきました。

それでは実際にそれになんの意味があるのか、人間にとってなにか役立つのかといったことが気になると思います。

1/fゆらぎはリラックス効果を人間にもたらすことが一般に言われています。

例えば音楽には1/fゆらぎがほとんどのものに含まれているそうです(このことから武者先生は音楽を「「音響振動であってその振動数が1/fゆらぎをするもの」とさえ定義しています4)武者利光 小特集一快適性向上を求めて一1/fゆらぎと快適性 日本音響学会誌50巻6号(1994), pp.485−488)。

音楽とリラックス効果については以下の記事も参照して見てください。

他にも手作りのものや、日本家屋などに1/fゆらぎは見られるとされ、そうしたものに触れることでリラックス効果が得られると言われています。

1/fゆらぎに関するコラム

1/fゆらぎについては他にも様々なことが言われています。ここでは真偽は検証していないものの面白いトピックについて紹介します。

1/fゆらぎの声を持つ人がいる?

1/fゆらぎを持つと言われる歌手もいるようです。

「1/fゆらぎ 歌手 女性」などで検索すると出てきます(真偽については不明です)。

ちなみにCDもしくはWAVファイルから、1/fゆらぎが含まれるかどうかを判定するソフトも公開されています。興味がある人は使ってみるといいかもしれません。

1/fゆらぎはまゆつば? 「1/fゆらぎ使用」のあやしさ

ここまで1/fゆらぎについて紹介してきました。

ここまででなんとなく分かったけど、あやしいなと思われた方もいるかもしれません。実際、「ものに含まれる1/fゆらぎ」、「声に含まれる1/fゆらぎ」がそれぞれ具体的に何を指しているのかについては今回調べた限りではよくわかりませんでした。

1/fゆらぎはかなり曖昧なところを残した用語と言えるので、特にあまり詳しくない人は安易に「1/fゆらぎ=リラックス効果、集中力UP」と決めつけない方がいいとは思います。

まとめ

この記事では1/fゆらぎについて解説しました。まとめると以下のことが言えそうです。

  1. 1/fゆらぎとは、1/f雑音(ピンクノイズ)と類似したスペクトルを持つゆらぎ(現象)のことを指す
  2. 1/fゆらぎは自然界や人間の活動のあらゆるものに見られる
  3. 1/fゆらぎはリラックス効果をもたらす

一方で、1/fゆらぎに関する明確な科学的根拠が書かれた和文文献はあまり多くは見つかりませんでした。
今後も探していきますが、「1/fゆらぎ」が入っている、使われている、という宣伝文句を過度に信じるのは早計かもしれません。

References

References
1 武者利光 「1/fゆらぎ」 応用物理第46巻第12号(1977)
2 https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/c_support/tech_term/cf_fft/cf3_4.htm#cf3_6mark2
3 https://www.athome-academy.jp/archive/mathematics_physics/0000000230_all.html
4 武者利光 小特集一快適性向上を求めて一1/fゆらぎと快適性 日本音響学会誌50巻6号(1994), pp.485−488

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