集中力とはなにか? 集中力があると「仕事ができる」になるのか?

集中力とはなにか? 集中力があると「仕事ができる」になるのか?

集中力を高める、集中力をつけるなどはしばしば取り上げられます。

そもそも集中力とはどのような力なのでしょうか?

この記事では、いくつかの文献を参考に集中力とはどのような力かについて考察していきます。

「集中力の測定」で見ている「注視力」

集中の測定で測っているのは「注視」

実験のイメージ

あるものが集中力の向上に効果があるかどうか測定する実験(作業時の音楽が集中力に影響を与えるかなど)では、その前後で集中力を測定します。

集中力の測定に際して使われるものには以下のようなものがあります。

  • 脳波の測定
  • 単純な課題の成功率の測定
  • 注視時間の測定

ここで測定している「集中力」はざっくりと対象から意識をそらさないようにする力、「注視力」とでも言えそうです(単純な課題では計算課題が行われる場合もあり、注視以外の要因も考えられそうですが、ここではわかりやすく「注視」という言葉を使います)。

注視を続けるのはそもそも困難

金魚のイメージ

集中の持続時間は8秒、金魚以下であるというマイクロソフトのチームの報告をもとにした記事(参考:「現代人の集中力持続は金魚以下!IT進化で激減」DIAMOND ONLINE)がしばしば現代人の集中力の欠如の文脈で取り上げられますが、これはこの「注視力」をもとにしたものだとわかります。

じっと一点だけを見続けることは実際困難です。アメリカにおいて禅を広めることに尽力した鈴木俊隆氏の言葉をまとめた本「禅マインド ビギナーズ・マインド」(鈴木俊隆著 松永太郎訳)にも注視することの難しさは書かれています。

集中というのは、なにかを一所懸命に見つめることではありません。坐禅で、一ヵ所を五分も見つめていると疲れてくるでしょう。それは集中ではありません。

「禅マインド ビギナーズ・マインド」(鈴木俊隆著 松永太郎訳)より引用

私たちが欲しいと感じる「集中力」

こうした実験で測定される「注視力」を見ていくと、私達が日常で「集中力がほしい」「もっと集中力があれば。。」と感じる瞬間に求めている「集中力」とはどこか性質が違うもののように感じられます。

以下いくつかの基準を通して、私たちが欲しいと感じる集中力の条件について考察します。

集中力の対象

対象のイメージ

注視だけが問題になるのであれば、おもしろい映画ゲームにハマっている状態は集中している状態に当たるでしょうか?

私達が集中力が欲しいという場合、「取り組まなければならないものに」専念する力、という付帯状況がつきそうです。

先に述べたように注視し続ける、取り組み続けるのは困難なので、専念というのは或る程度のスパン(数10分~数時間程度)で断続的に取り組む形になるでしょう。

ここでは注意を引き戻す力も必要になります。Googleのマインドフルネスの研修プログラムについて書かれた「サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法」(チャディー・メン・タン著 英治出版 2016)では以下のように書かれています。

注意をすばやく頻繁に復元できれば、結果的につねに注意を払っている状態に保てる。それが集中力だ。

「サーチ・インサイド・ユアセルフ――仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法」(チャディー・メン・タン著 英治出版 2016)

集中力のコントロール

コントロールのイメージ

一方で、取り組むべきことに集中していても、過剰に集中しすぎる人、適切な時間を超えて取り組み続ける人は集中力がある人とはみなされないかも知れません。

ADHD(注意欠陥多動性障害)の特徴としても過集中は挙げられています。

始めた時点で取り組むべきタスクであっても、取り組む中で時間がかかりすぎてしまったり、他のタスクとの優先順位が入れ替わったりといったことは往々にして起こります。

その作業の遂行に適切な時間を自分の力でコントロールできるという条件も必要になりそうです。

またここには他の優先度の低い作業や娯楽などの誘惑に対して自制することができる、というコントロール能力も含まれるでしょう。

「集中力がある」と「仕事ができる」になるか?

私達が集中力が欲しいというとき、以下の条件がありそうなことを見てきました。

  1. 対象に専念する力
  2. コントロールできる力

それではなぜこのような集中力が欲しいと感じるのでしょうか?

大体の場合は仕事で成果をあげたい、パフォーマンスを上げたいという理由がほとんどでしょう。

集中できる=仕事ができるではない

集中≠仕事のイメージ

では、集中力があればいわゆる「仕事ができる人間」になれるのでしょうか?

結論から言えば、集中力があるからといって必ずしも仕事のできる人間にはなれません。

例えば一時間机にかじりついて、タイピング作業を終えた人と、30分くらいコーヒーを飲んでくつろいでいたものの10分程度でショートカットを使いながらタイピングを終えた人では、前者の方が仕事ができないとみなされる可能性が高いです。

また、自分の作業に集中していてもまわりの様子に気を配れなかったり、取り組んでいるタスクの優先度が落ちているのに気づかなかったりすれば仕事ができるとはみなされないでしょう。

仕事ができるようになるための力

仕事ができるのイメージ

集中力とは違うところで、このような成果に関係のありそうな要素として以下のようなものが挙げられると思います。

  • 目標設定力
  • 段取り力
  • 「空気」を読む力

ここで言いたいのは、「仕事ができるようになりたい」と思うとき、必ずしも集中力を伸ばすというのは得策でないかもしれないという事です。

自分の状況を客観的に見て、どの能力を鍛えれば自分の理想に近づけるのかを冷静に見極める必要があります。

外的なモチベーションは危険

モチベーションのイメージ

また仕事ができるようになりたい、というよりも「集中力がある人と思われたい」という気持ちが先に立っている場合はより注意が必要です。

外発的な動機付けによって逆にモチベーションが低下する、アンダーマイニング効果が一般的に知られています。

つまり、人からこのように思われたい、という外的なモチベーションが先行すると肝心の仕事のパフォーマンスが落ちてしまう可能性があります。冷静な自己分析が必要です。

まとめ

この記事では集中力とは、そもそもなにかについて考察し、ゴールとなる成果の創出には、集中力以外の力も必要となることについて触れました。

「集中力」という言葉が出てきたときに、その文脈でどのような意味で使われているかには注意を払うとよさそうです。
また、集中力が欲しいと思うとき、自分に必要な力はどの部分なのか見極めることも重要です。

ぜひ集中力をつける上で参考にしてみてください。

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