作業に集中する前に、まず作業に取り掛かることにハードルがあると思います。
集中したいと思っていてもついつい「ながら作業」になってしまったり、気づくと注意が散漫になっていたりということは誰にでもあるでしょう。
一気に集中するためにはどうすればいいのでしょうか?
この記事では一気に集中状態に入るために考慮すべきこと、取り組むべきことについて概観します。
ステップ1:取り組む作業の性質を知ろう
まずは集中の対象となる作業の性質について知っておく必要があります。
そもそもゲームやパズルなど自分の中から湧き上がる興味や衝動をもとに行うもの(内的な動機付け)は基本的に集中力が切れて悩むことはありません。
作業で集中力が切れてしまう原因はこうした内的な動機の不足と言えます。
集中力が切れてしまう作業には前段階として外的な動機付けを与える必要があります。
動機付けの理論の大家であるエドワード・デシは自身の自己決定理論におけるモチベーションの分類を以下のような図で説明しています。
Richard M. Ryan & Edward L. Deci “Intrinsic and extrinsic motivation from a self-determination theory perspective:
Definitions, theory, practices, and future directions” contemporary Educational Psychology 2020を参考に筆者作成
まずは作業をゲーム化しよう
前述のとおり、多くの作業にはまず外的な動機付けを与えることが必要です。
言ってみればその作業自体をゲーム化する必要があります。
ゲーム化のプロセスでまず重要になるのは先ほどの図における「外的制裁・報酬」と「承認」の設定です。
モチベーションづくりの初期段階で行うべき、「ゲーム化」について紹介します。
作業を宣言する
やる作業を宣言することは未達成時の恥ずかしさ・気まずさから外的な制裁と等しい効果があります。
これは作業開始前に、家族や、友人などできれば他人に宣言するのが好ましいです。難しければ紙に目標を書いて貼っておくことでも一定の効果があるでしょう。
競争する
同じ作業で競い合える仲間や友人がいる場合は積極的に競い合いましょう。
個人間でちょっとしたペナルティやご褒美を課したりすることでより効果を高めることが可能です。
目標を決める
もし英語の勉強など、資格試験と絡めることができる作業であれば、受験を申し込んでそこに向けて努力するというのは手っ取り早い方法です。
よく資格はいらないという議論がありますが、こうした作業の動機付けとして使う分にはかなり有効といえるでしょう。
ただしあまりに遠い目標だと「学習性無力感」といって、目標に到達できないストレスから逃れようと作業をやめる衝動が生まれやすくなるので注意が必要です。
ステップ2:作業のスイッチを作ろう
取り組む作業にモチベーションを作ったら次は作業を始めるためのスイッチを用意しましょう。スイッチとはいいかえれば、自分が自然に作業に入れるルーティーンに相当します。
タイマーを使う(時間を決める)
タイマーなどで時間を区切って行うことでメリハリが生まれ、とりあえず10分だけ始めてみる、といったことも可能になります。
タイマーではポモドーロ・テクニックの使用がおすすめです。
ポモドーロ・テクニックは25分の作業時間、5分の休憩時間を繰り返す方法です。
最近ではこれに対応したスマートフォンアプリも多数出ています。取り組み方、おすすめのタイマーについては以下の記事を参考にしてください。
香りを使う
ちょっとした集中に入るサインを作るのは意外に効果があります。
おすすめしたいのはアロマの使用です。
レモンなど柑橘系の香りには集中力を高める効果があると言われています。精油をお湯に2,3滴たらせば部屋中に香りを満たすことができます。
音を遮断する
外の音をシャットアウトして集中モードに入るのも効果があります。
普通のイヤホン・ヘッドホンしか持っていなければノイズキャンセリング機能のついたものの購入を強くお勧めします。最近のものは性能がよく市販の耳栓よりも効果があるものも多いです。
また、無音だとかえって気になるという人は作業用の自然音などを用意するのがおすすめです。
ただし歌詞入りの歌は言語情報を伴う作業(ライティングや資料の読み込みなど)では控えたほうがいいでしょう。
作業場所を決める
作業場所が定まっていない場合は各作業を行う場所を決めてしまうのも有効な手段です。
できればよく行う作業ごとにメインの場所を決めておきましょう。
一つのことだけに絞る
ついついパソコン作業で二画面にして動画を見ながら、音楽やラジオを聞きながら作業をしてしまうことはあると思います。
しかし本当に集中したいときにはこれらからはいったん目を背けることが必要です。
音楽、テレビ、スマホなど「ながら作業」ができてしまうものは手の届く範囲からいったん排除しましょう。
ただ、作業に取り組むときに何となく気乗りしないな。。というときには好きな音楽を聴きながら作業を始めてみることは効果的になり得ます。
また、人は一つのことに集中しているつもりでも複数のことを同時に気にかけていることが多くあります。日々の作業を見直して作業中に一つの作業に専念できているかを検証してみると良いと思います。
ステップ3:作業に集中しよう
作業に取り掛かれるようになったら、最後に作業に集中できるように体を脳を慣れさせていきます。
とりあえず始める
準備が整ったらとりあえず作業を始めます。
そしてとりあえず決めた時間(10分、25分など短い時間でOK)になるまで取り組んでみます。
人間には「作業興奮」といって始めた後でやる気がわいてくるという性質があります。
よく「やる気が出ない」→「やらない」という思考回路に陥りがちですが、本来「やる」→「やる気が出てくる」の流れなのでこの「ひとまずやる」というのは極めて合理的です。
意欲がわかない時ほど「ひとまずやる」を実践しましょう。
習慣化するまで続ける
作業を続けられるようになったら習慣になるまで、繰り返します。
習慣化できるまでにはどれくらいの時間がかかるのでしょうか?
ロンドン大学の研究チームの調査によると、平均で66日(被験者間で18日から254日の間で開きあり)とのデータがあります。
これは習慣化するように動機づけられた環境であること、比較的簡単な習慣であることから、本来はもっとかかると推定できますが、まずは低いハードルの習慣を、毎日こなすなど完璧主義になりすぎずにこなすことが習慣化のコツだと思います。
まとめ
この記事では集中モードに入るための「スイッチ」について紹介しました。
作業を始める際にはぜひこれらを参考にしてみてください。