どんな時に人は集中状態に入れるのか?
集中できないことに悩みを抱えている人なら考えたことがある人も少なくはないと思います。
この疑問を解決する理論として、心理学やスポーツの世界ではいくつかの説明が用意されています。
この記事ではそうした理論の一つ「フロー理論」を取り上げ、集中状態について考察していきます。
フロー理論とは
フロー理論は心理学者ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)の提唱した概念です。彼はポジティブ心理学と呼ばれる、「人の幸福に真に寄与するもの」の研究に力を注ぎました。
その中で彼は「フロー」という言葉で人間がやりがいを持って取り組める状態を説明しています。
フロー理論ではやりがい(challenges)と能力(skills)によって、人間の状態を説明します。以下の図は、二つの相関によって、人間の状態を8つに分類したものです。
この図では取り組む仕事やタスクと、自分の能力との関係性により、人に訪れる心理的な状態を説明しています。
例えば、左上の、自分のスキルに比べて、タスクの難易度が著しく高い場合は、人は「不安(anxiety)」の状態になります。逆に右下では、スキルに比べてタスクが簡単なのでリラックス状態になります。
フロー理論では最も好ましいのは自分の能力とタスクの難易度のバランスがとれている「フロー(Flow)」の状態(右上)だとしています。ちなみに二番目に好ましいのは、自分の能力から考えると、より難しいタスクに取り組む「覚醒(Arousal)」の状態です。
図で示されているほどはっきりと分かれてはいないものの直感的に理解できる内容ではないかと思います。
そしてフロー状態に入っている時間が人生において長ければ長いほど人生における幸福は大きくなると説明しています。
フローと集中力
フローと集中力はどのように関係するのでしょうか。
それを理解するためにはフロー状態にいるとどう感じるかについて触れる必要があります。
フロー状態では文化や教育によらず7つの状態が得られるとしています。
- Completely involved in what we are doing – focused, concentrated.
- A sense of ecstasy – of being outside everyday reality.
- Great inner Clarity – knowing what needs to be done, and how well we are doing.
- Knowing that the activity is doable – that our skills are adequate to the task.
- A sense of serenity – no worries about oneself, and a feeling of growing beyond the boundaries of the ego.
- Timelessness – thoroughly focused on the present hours seem to pass by in minutes.
- Intrinsic motivation – whatever produces flow becomes its own reward.
それぞれ訳すと以下のようになります。
- 自分のやっていることに完全に集中している
- 日常の現実から切り離された快楽の状態にある
- なにが必要かどうやればいいか明快にわかっている
- 自分の能力にタスクがあっていて「できる」とわかっている
- 心配はなく自我を超えた静寂の感覚がある
- 時間が止まったように感じる
- 本質的な動機になっている
一番目はまさに集中状態について言及しており、フロー状態と高い集中状態は不可分な存在であることがわかります。
逆に言えば、深い集中状態に入っている時には、これら7つの状態が同時に見られるようになることも意味しています。
フローの別名
フローについては、他の呼称も知られており、有名なものではスポーツで使われるゾーン(The Zone)があります。
他にも、wired in, hack mode, software timeなどといった言葉もソフトウェア開発者の中では知られているそうです1)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AD%E3%83%BC_(%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6)#cite_note-4。
まとめ
この記事ではフロー理論について説明し、深い集中状態にある時に、どのような状態に人がなるのかについて紹介しました。
この他にも人間の集中に関わる理論体系はいくつか存在します。今後の記事ではそうした理論も取り扱っていきます。