誰もが高い集中力を手に入れたいと思っていると思います。
では実際に高い集中力を手に入れるためにはどのようなことを知っておく必要があるでしょうか。
「ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45」(鈴木 祐 SBクリエイティブ)では高い集中力・生産性を発揮する「ハイパフォーマー」になるには、その集中力の決定要因となる人間の集中力について知る必要があると書かれています。
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この本では、その性質を「獣」と「調教師」という言葉に置き換えています。
そして、「調教師」が「獣」をうまくコントロールすることで集中力が生まれると説明しています。
この記事では、「ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45」で紹介されている4つの分野別の対立概念を整理し、用語の解説や、背景もプラスしながら解説していきます。
【一般的な区分】衝動と理性
冒頭で人間の二つの性質、「調教師」と「獣」について書きました。
これらはそれぞれ、「衝動性」と「理性」に対応します。
そもそも「衝動」と「理性」はどのように定義されるでしょうか?ブリタニカ国際大百科事典では以下のように定義されています。
衝動
まず「衝動」について。
内部から強迫的に動かされる行為のことで,反省やためらいや意図などの介入する余地がないもの。または,そのような行為を引起す傾向を意味する。精神分析では,特にイドにより規定されている行為をさす。
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より引用)
定義は抽象的ですが、内発的・直感的なものであることが言えると思います。記載されている、精神分析における「イド」についてはこちらの記事で簡単に解説されています。
理性
次に「理性」は以下のように定義されています。
一般には精神や知性と等しく,意識的思考能力の全体をいい,信仰,感覚,経験,無意識とそれぞれ対立する。広い意味では意志をも含んでいる。まず理性は推論reasoningの能力と考えられる。すなわちそれは概念や命題を明確に区別したうえで,その間に論理的連関を見出す能力である。(以下略)
(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より引用)
こちらも難解ですが、ここでは論理に基づく推論を行う性質があることが分かります。
二つをまとめて簡単に言うと、衝動はとっさの動き、理性は考えての動きと言えるでしょう。
それぞれの学問分野における分類
衝動と理性について見てきました。
こうした人間の相反する性質を二元的に捉える見方は珍しいものではなく、脳科学・社会学などさまざまな学問領域でこの分断のテーマは言葉を変えて語られています。
【脳科学の区分】前頭前皮質と辺縁系
脳科学においては前頭前皮質と大脳辺縁系の機能によって分断が説明されます。
まずは人間の脳のつくりを見ていく必要があります。それぞれの脳内の位置を簡単に図示すると下図のようになります。
図を見ると大きく3つに分かれていることが分かります。
- 脳幹(緑)
- 大脳辺縁系(紫)
- 大脳新皮質(ピンク)
1つ目の脳幹は、もっと根本的な生存に関する機能を司るので「爬虫類脳」とも呼ばれる部分です。ここでは説明は割愛します。
残りの2つを見てみましょう。これらはそれぞれが覆いかぶさるような構造になっていることが分かります。
そして進化の過程でとらえると、内側から順に発達してきました。
動物的な部分については昔から、より人間的な理性の部分に関しては後から発達してきたと言えると思います。
大脳新皮質は前頭前皮質の前方部にあたり、より「人間らしさ」に関わる部分を司っています。
【心理学の区分】ヒューリスティックスと分析的思考
心理学の文脈ではヒューリスティクスと分析的思考がこれにあたります。
前者は聞きなれない言葉ですが、簡単に言えば「経験則」です。人が問題解決の場面で無意識的にとる簡便な思考がこれにあたります。
分析的思考については読んで字のごとくです。
【行動経済学の区分】システム1とシステム2
行動経済学ではシステム1、システム2という区分が知られています。
これらは合わせて「二重システム理論(二重過程理論)」として一般に知られています。
これも言葉を変えただけでシステム1が直感型の処理プロセス、システム2が熟慮型の処理プロセスをそれぞれ表しています。
数字の違いしかないのでどちらが直感的か分からなくなりそうですが、数字が大きい方がより高度な思考だと暗記しておくと良いでしょう。
まとめ
ここでは、学問領域ごとに集中に関係する、人間の集中力に関連する人間の二つの性質について解説しました。
それぞれをグループA, グループBとしてまとめると数のようになります。
この記事では説明ができませんでしたが、グループBがグループAの機能を制御することによって集中力は発揮されます。
直感的に作用する性質を、理性的な性質がうまくコントロールすることによって適切な集中力を発揮・維持することができるのです。
今後の記事ではその具体的な方法などについても詳しく解説していきます。