集中力を科学できる時代の到来!ニューロテックが変える集中力の未来

集中力を意図的に向上させていくための手法としてバイオフィードバックが注目されています。

バイオフィードバックの中でも、特に脳波の測定と、その可視化を活用する分野、「ニューロテック(NeuroTech)」の分野が密かに広がりを見せています。

既に海外では複数のニューロテック企業が革新的な取り組みを見せています。

この記事ではニューロテックとは何か、現在起こっている技術革新の概要と、ニューロテックを牽引する企業について紹介していきます。

ニューロテック(NeuroTech)とは

ニューロテック(NeuroTech)脳波(EEG)のフィードバックをもとにパフォーマンスを向上させたり、脳波によりものを動かしたりするような、脳波の工学的な抽出によって生まれる新たな技術革新(分野)のことを指します。

厳密に定義された言葉ではないようですが、後にも紹介するEmotivのHPではこの言葉が使われています。

脳波のデータを可視化、ないし意味のあるデータに変換することによって、人間の行動に補助的な役割をすることが期待されています。

他にも念じるだけでドローンを飛ばしたりカーテンを開けたりといった技術も開発されています。これらもニューロテックの一部であると言えます。

ニューロテックのトレンドは脳波測定ウェアラブル

今のニューロテックのトレンドの一つを生み出しているのが脳波を測定し抽出できるウェアラブルデバイスです。

脳に電極を付けて脳波を測定する様子は多くの人が見たことがあると思います。

最近の技術によってどのような変化が起こってきているのでしょうか?

ニューロテックにおける技術革新について、Emotiv社のCEO、Tan LeはTed Talksの中で分かりやすい説明を行っています。

そこでは今までにあった困難と、そのブレークスルーについて以下の二点があげられています。

  1. 万人に適応できる汎用的なデータの抽出
  2. 使いやすく安価なデバイス

順番に見ていきます。

万人に適応できる汎用的なデータの抽出

脳波を測定することは比較的昔から行われてきましたが、それを意味あるデータにするのはかなり難しい技術が必要になります。

Tan Leは以下のように説明しています。

・・・脳表面は高度に折り畳まれています。この皮質の折りたたみは重要な課題を提示します 表面の電気インパルスを解釈するため人の皮質は、折り畳まれています。したがって、信号が脳の同じ機能部分から来たとしても、構造が折りたたまれるまでにその物理的な場所は指紋のように個人間でまったく異なり、一卵性双生児であっても異なります。表面の信号に一貫した解釈をすることはできません。

私たちのブレークスルーは 、皮質を展開するアルゴリズムを作成したことでした。これにより、信号をその発生源に近づけてマッピングできるため、より多くの人に適応できるようになったのです。

https://www.ted.com/talks/tan_le_a_headset_that_reads_your_brainwaves/up-next#t-149297より引用

つまり、脳波を読み取ることはできても、それに機能的な解釈を与えるには、各個人の脳においてどのように機能が所在しているのかを特定する必要があるということです。

近年はアルゴリズムによって、こうしたことも可能になってきていると言えます。

使いやすく安価なデバイス

また、以前の手法では高価なうえにプロセスが煩雑で快適ではありませんでした。

これについては以下のように説明されています。

2番目の課題 は、脳波を観察するための実際のデバイスです。 EEG測定には 、通常、(ここに写真で見られるような)センサーの配列を備えたヘアネットが含まれます。技術者は 導電性ジェルまたはペーストを使用して、電極を頭皮に配置しますが、このプロセスの後でよくかすり傷のようになります。これは非常に時間がかかり、最も快適なプロセスではありません。その上、これらのシステム実際には数万ドルの費用がかかります。・・・

(私たちの)デバイスは14チャネルの高忠実度 EEG収集システムです。 頭皮の準備は不要で、導電性ジェルやペーストは必要ありません。装着して信号が安定するまで 数分しかかかりません。また、ワイヤレスであるため、自由に移動できます。また、従来のEEGシステムの数万ドルと比較すると、このヘッドセットは数百ドルしかかかりません。

https://www.ted.com/talks/tan_le_a_headset_that_reads_your_brainwaves/up-next#t-149297より引用

手軽に装着し、脳波が測定できるだけでなく、低価格も実現できるようになったということが分かります。

ニューロテックのパイオニアたち

ここまでニューロテックを取り巻く技術革新について概観してきました。

国内だとまだまだなじみが薄いと思いますが、海外では続々とこうした脳波をフィードバックするウェアラブルデバイスが市場に出てきています。

ここではクラウドファンディング中のものも含め3つの企業と、そのデバイスを紹介します。

Emotiv


記事冒頭でも登場したEmotiv社は、アルゴリズムを武器に脳波の測定デバイスを提供してるアメリカのテック企業です。

新しい取り組みとして労働環境の生産性、安全性を高めるためにより扱いやすいイヤホン型のウェアラブル端末を用いて、生産性の向上につなげる提案も行っているようです。

InteraXon


カナダのInteraXonmuseという脳波測定デバイスを提供しています。

museはアプリと連動して、バイオフィードバックを行うことにより、個人のマインドフルネスに貢献するデバイスです。

CEOのAriel Gartenは、もともとはこうした集中や瞑想の領域ではなく、脳波を使ってものを動かしたり、ライトを点灯させたりといったことを志向していたものの、「自分を知る」という方向性に大きく転換したという経緯を語っており、非常に興味深いです(参考:https://www.ted.com/talks/ariel_garten_know_thyself_with_a_brain_scanner/up-next)。

museは複数のモデルが出されており最新モデルのmuse Sでは、睡眠に関する改善も行えるようです。

Mindset


Mindsetは同名の集中に特化したヘッドセットを提供しています。

クラウドファンディング大手Kicksrarterで1億円超を調達しています。

Mindsetはノイズキャンセリングや、集中に役立つサウンドの再生といった基本的なことのほか、頭頂部の端子から脳波を測定して、集中力がそれた時に可視的にフィードバックを行う機能を搭載しています。

価格は30,000円超と高いですが、ヘッドホンをするだけで脳波をもとにしたフィードバックが得られるのは夢があります。現在は予約注文のみとなっており、公式の販売はこれからのようですが目が離せません。

まとめ

この記事では新しい分野「ニューロテック」についてその概要と、代表的な企業、その商品を紹介しました。

国内ではマーケティングの領域において測定した脳波を用いて嗜好性を調べる取り組み(ニューロマーケティング)は以前から行われてきましたが、脳波の測定とバイオフィードバックの領域は目立ったものが見られません。

今後国内でもアツい分野になっていくことが予想されます。

今まで不透明なことも多かった「集中力」もこれによって明らかにされていくでしょう。
これからテクノロジーの動きにも注目していきたいですね。

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