コロナウイルスの影響で在宅勤務が増えて、デリバリーでの食事が増えた人も多いのではないかと思います。
ハンバーガーやピザなど脂っこい食事はデリバリーの定番メニューです。
脂っこい食事は健康に悪いと一般に言われていますが、集中力にはどうなのでしょうか?
最新の研究では脂肪の種類と集中力への影響を比較しています。
この記事では最新研究を取り上げ、脂肪と集中力の関係について紹介します。
最新の研究が示す集中力によくない脂肪
2020年5月に発表された、オハイオ州立大学の学生の最新の研究によると、「高飽和脂肪食」が食後の注意力に悪影響を与えるとされています。1)Annelise A Madison, Martha A Belury, Rebecca Andridge, M Rosie Shrout, Megan E Renna, William B Malarkey, Michael T Bailey, Janice K Kiecolt-Glaser “Afternoon distraction: a high-saturated-fat meal and endotoxemia impact postmeal attention in a randomized crossover trial” The American Journal of Clinical Nutrition, nqaa085, 2020
これまでも、ハイカロリーな食事と集中力の関係については研究が行われており、ある研究ではカロリーに占める脂肪の割合が23%の食事と75%の食事をそれぞれ5日間摂取した実験では、後者の食事で注意力が低下する結果が得られています2)Holloway CJ1, Cochlin LE, Emmanuel Y, Murray A, Codreanu I, Edwards LM, Szmigielski C, Tyler DJ, Knight NS, Saxby BK, Lambert B, Thompson C, Neubauer S, Clarke K. “A high-fat diet impairs cardiac high-energy phosphate metabolism and cognitive function in healthy human subjects.” American Journal of Clinical Nutrition Vol93 p748-755 2011。
新たにこの研究では脂肪の種類と一回の食事(継続的な摂取ではない)に着目した実験が行われました。
被験者は高飽和脂肪酸の食事と、高一価不飽和脂肪酸(オレイン酸ひまわり油を使用)の食事をそれぞれランダムに摂取しました。
そして被験者の食前と食後のパフォーマンスを課題(CPTと呼ばれる集中力・注意力の計測に使われる試験)により比較しました。
結果は、高飽和脂肪酸を多く含む食事のあとはスコアが高く(認知のエラーが多く)なりました。
一回の飽和脂肪酸を多く含む食事が注意力・集中力に悪影響をもたらすことを示した形です。
ちなみに実験で出てきたオレイン酸はオリーブオイルやナッツなどが代表的で、悪玉コレステロールを下げ、善玉コレステロールは下げないなどの効用があるとされています3)日本植物油協会 「植物油と栄養」”https://www.oil.or.jp/kiso/eiyou/eiyou02_03.html”。
覚えておきたい脂肪の分類
研究では飽和脂肪(酸)と不飽和脂肪(酸)の二つが出てきました。
それぞれについてもう少し詳しく見ていきます。
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸は肉などの動物性の油に加えて、ココナッツなどの油脂にも含まれています4)栄養成分ナビゲーター 栄養成分百科 「脂肪酸」 “https://jp.glico.com/navi/dic/dic_27.html”。
飽和脂肪酸の過剰な摂取は肥満や生活習慣病につながることから「飽和脂肪酸は悪!」というイメージもあるかと思いますが、不足もまた健康にとってよくないと言われており適切に摂取することはむしろ重要です。
特にココナッツオイルは近年健康へのポジティブな影響が報告されるなど注目が集まっています。
一方で、繰り返しになりますが悪い油の過剰な摂取には注意が必要でジャンクフードはその最たる例です。
ジャンクフードは健康への影響が指摘されていますが、集中力の観点から見ても、食後に集中したい作業が控えているときには避けたほうがいいと言えます。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸は植物油のほとんどがこれにあたります。
DHA、EPAといった魚に含まれる脂も含まれます。
ちなみに飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは、炭素の二重結合の有無にあり、他にも常温で液体か固体かという特徴の違い(飽和脂肪酸は固体が多い)もあるようです。
研究では、一価不飽和脂肪酸が比較で挙げられていますが、体内で作ることができない多価不飽和脂肪酸も重要です。
特にオメガ3系と呼ばれる種類の油は健康面で注目されており、前述のEPA, DHAはこれに当たります。
集中に効果のある栄養素として以下の記事でも紹介しています。
まとめ
この記事では、脂肪と集中力の関係について、最新の研究をもとに考察しました。
油の良し悪しは健康面での議論が多いですが、集中力の観点から見ても重要であることが示唆されています。
悪い油を摂取しない、なるべくいいとされる油を摂取することが対策として考えられるでしょう。
紹介したようなオメガ3系の油(魚やナッツ)に加えて植物性の飽和脂肪酸(ココナッツオイル)などがおすすめです。
ぜひ今後の食事で油にも気をつかってみてはいかがでしょうか。
References
↲1 | Annelise A Madison, Martha A Belury, Rebecca Andridge, M Rosie Shrout, Megan E Renna, William B Malarkey, Michael T Bailey, Janice K Kiecolt-Glaser “Afternoon distraction: a high-saturated-fat meal and endotoxemia impact postmeal attention in a randomized crossover trial” The American Journal of Clinical Nutrition, nqaa085, 2020 |
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↲2 | Holloway CJ1, Cochlin LE, Emmanuel Y, Murray A, Codreanu I, Edwards LM, Szmigielski C, Tyler DJ, Knight NS, Saxby BK, Lambert B, Thompson C, Neubauer S, Clarke K. “A high-fat diet impairs cardiac high-energy phosphate metabolism and cognitive function in healthy human subjects.” American Journal of Clinical Nutrition Vol93 p748-755 2011 |
↲3 | 日本植物油協会 「植物油と栄養」”https://www.oil.or.jp/kiso/eiyou/eiyou02_03.html” |
↲4 | 栄養成分ナビゲーター 栄養成分百科 「脂肪酸」 “https://jp.glico.com/navi/dic/dic_27.html” |